
繰り上げ返済「する派・しない派」どっちが得?FPが試算した3つの判定基準【変動金利対策2026】
「金利が上がってきた。繰り上げ返済、急いだほうがいい?」
変動金利で家を買った共働きファミリーから、最近こういった相談が急増しています。金利上昇のニュースを見るたびに焦る気持ちはよくわかります。でも、焦って繰り上げ返済を急ぐのが正解とは限りません。
実は、繰り上げ返済が「得」になる人と「損」になる人は、家計の状況によってはっきり分かれます。この記事では、西宮で共働きファミリーの家計を見てきたFP・建築士の視点から、変動金利上昇期における繰り上げ返済の正しい判断基準を解説します。
- わかること①:繰り上げ返済の2タイプ(期間短縮型・返済額軽減型)の違いと、共働き世帯への向き不向き
- わかること②:変動金利上昇期に「繰り上げ返済すべき人・しない方がいい人」を分ける3つの判定基準
- わかること③:住宅ローン控除の残存期間と繰り上げ返済の損益分岐点(2026年4月時点)
- わかること④:共働き世帯が陥りがちな繰り上げ返済の失敗パターン3選と防ぐ方法
- 対象①:変動金利でローンを組んでいて、金利上昇が不安な方
- 対象②:繰り上げ返済か手元資金維持かで迷っている共働きファミリーの方
- 対象③:住宅ローン控除の期間中に繰り上げ返済していいか判断できていない方
繰り上げ返済で「後悔した」人たちに共通すること
多くの方が繰り上げ返済で後悔するのは、「金利が上がった」という一点だけを見て判断したからです。繰り上げ返済は確かに利息を削減できる強力な手段ですが、タイミングと家計の状況を無視すると逆効果になります。よくある失敗パターンを3つ見ておきましょう。
失敗パターン①「育休直前に繰り上げして、現金不足に」
変動金利が上がり始めたタイミングで100万円を期間短縮型で繰り上げ返済。その直後に第二子の育休に入り、月々の手取りが激減。貯蓄が底をついて生活費が回らなくなったケースです。繰り上げ返済したお金は、一度入れると手元に戻ってきません。「今の収入」だけで判断した結果、育休後の家計が一気に苦しくなりました。
失敗パターン②「住宅ローン控除の期間中に、損する繰り上げをした」
住宅ローン控除の控除率は、年末ローン残高の0.7%です(2026年4月時点)。借入金利が0.7%を下回っている場合、繰り上げ返済で残高を減らすと、控除で取り戻せる額が利息コストを上回っていた状態が崩れ、実質的に損になるケースがあります。「返せるなら早く返した方がいい」は、控除期間中は必ずしも正解ではありません。
失敗パターン③「期間短縮型にこだわって、月々が苦しくなった」
利息軽減の効果は期間短縮型の方が大きいのは事実ですが、毎月の返済額は変わりません。変動金利の上昇で月々の返済額が増えているタイミングでは、返済額軽減型で月々の負担を下げる方が家計安定に直結するケースも多くあります。「効率が良いから」という理由だけで期間短縮型を選ぶのはリスクがあります。
実際にあったご相談:Aさんご夫婦のケース
Aさん(夫38歳・妻35歳/共働き/子ども2人)
西宮市内の中古マンションを3,000万円で購入。購入当初の変動金利は約0.5%でしたが、現在は1.0%へ上昇。世帯年収は約900万円。子どもが小学生と保育園児の時期で、教育費がこれから増える見通し。手元に「繰り上げ返済に使えそうな」貯蓄200万円がある状態でご相談を受けました。
変動金利上昇期「繰り上げ返済すべきか」3つの判定基準
FPが実際の相談で使っている判断基準を3つ紹介します。この3条件を確認してから動くのが、最短かつ安全なルートです。
判定基準①「手元資金が生活費6ヶ月分+教育費積立を超えているか」
繰り上げ返済に使えるのは、以下の優先順位で確保した上での余剰資金です。順番を守らずに動くと、家計のバッファがなくなります。
- 優先①:生活費×6ヶ月分(緊急予備費)→ まず確保。育休・転職・急な出費に備える最低ライン
- 優先②:3〜5年以内の教育費ピーク分の積立(入学・塾・習い事など)→ 次に確保
- 優先③:①②を確保した残りが、繰り上げ返済の原資。ここから動く
「100万円貯まったら即繰り上げ」という判断は、緊急予備費が不足しているケースでは大きなリスクになります。繰り上げ返済したお金は戻ってきません。「貯まったら全部返済」ではなく、「余剰分から返済」が基本です。
判定基準②「借入金利は住宅ローン控除の控除率0.7%を上回っているか」(※2026年4月時点)
現在の住宅ローン控除の控除率は年末ローン残高の0.7%です(2026年4月時点)。借入金利とこの控除率を比較することで、繰り上げ返済の「有効ゾーン」かどうかを判断できます。
| 現在の借入金利 | 控除率(2026年4月時点) | 繰り上げ返済の判断目安 |
|---|---|---|
| 0.7%未満 | 0.7% | 控除期間中は繰り上げを急がない方がよい場合が多い |
| 0.7%〜1.0% | 0.7% | 家計の余裕次第で検討余地あり |
| 1.0%超 | 0.7% | 繰り上げ返済の効果が見込みやすいゾーン |
※控除率・制度は変更になる場合があります。最新情報は国税庁公式サイトにてご確認ください。
- 残り期間が10年未満になると控除対象外:期間短縮型の繰り上げ返済で返済残存期間が10年未満になった場合、その後は住宅ローン控除を受けられなくなります(国税庁・租税特別措置法第41条)。繰り上げ前に残り期間を必ず確認しましょう。
- 「金利>控除率」でも手元資金が薄い場合は保留:有効ゾーンに入っていても、判定基準①(手元資金の確保)が満たされていなければ繰り上げは待ちです。
変動金利が1%前後まで上昇した現在、多くの方にとって控除率を金利が上回る局面に入りつつあります。変動金利1%時代の損益分岐点の詳細はこちらの記事(変動金利1%時代の損益分岐点)もあわせてご覧ください。
判定基準③「今後3年以内に収入が大きく変わるライフイベントがないか」
共働き世帯で特に重要なのが、収入変動リスクとの兼ね合いです。次のようなライフイベントが見込まれる場合は、繰り上げ返済より手元資金の確保を優先してください。ペアローンを組んでいる世帯は2人分の収入変動リスクが重なる点にも注意が必要です。詳しくはペアローンのリスクについて解説した記事もご参照ください。
- 育休・産休の予定:手取りが大幅に下がる期間。育休給付金は当初約67%、その後約50%に下がります
- 時短勤務への切り替え予定:年収が数十万単位でダウンするケースが多い
- 転職・独立の予定:収入の安定性が変化する時期は手元資金を厚くしておく
- 教育費の急増:入学・受験・塾代増加など、3〜5年以内の大きな支出見込みがある場合
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期間短縮型 vs 返済額軽減型、共働きにはどちらが向いているか
繰り上げ返済の2タイプは目的が異なります。「どちらが得か」より「今の家計に何が必要か」で選ぶことが正しい判断です。
| 期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
|---|---|---|
| 効果 | 返済期間が短くなる | 毎月の返済額が下がる |
| 利息軽減効果 | 大きい | 相対的に小さい |
| 向いている人 | 手元に余裕あり・定年前完済を目指す方 | 育休前後・教育費増加期・月々の負担を下げたい方 |
| 金利上昇時の対応 | 総返済額を減らす効果 | 月々のキャッシュフロー改善に直結 |
変動金利が上がって毎月の返済額が増えているタイミングでは、「返済額軽減型」で月々の負担を抑えることが家計安定の直接策になります。手元資金が十分ある方は「期間短縮型」で総利息削減を狙うのが効率的です。どちらが正解かは、家計の「今の課題」によって変わります。住宅ローン控除の詳しい仕組みはこちらの記事(住宅ローン減税2026年版)もあわせてご確認ください。
セルフチェック:今のあなたに向いているのはどちら?
以下の5項目を確認して、自分の家計に当てはめてみてください。
- チェック①:手元資金が生活費6ヶ月分+教育費積立を上回っている → Yes なら「期間短縮型」を検討できる
- チェック②:今後3年以内に育休・時短・転職の予定がある → Yes なら「返済額軽減型」か繰り上げ見送り
- チェック③:借入金利が0.7%超、かつ控除期間終了まで3年以内 → Yes なら繰り上げ有効ゾーン
- チェック④:月々のローン返済で家計が苦しいと感じている → Yes なら「返済額軽減型」で月々を軽くするのが先決
- チェック⑤:定年前の完済を目標にしていて、残り返済期間が長い → Yes なら「期間短縮型」が合いやすい
①③⑤に多くYesが集まる方は期間短縮型、②④に当てはまる方は返済額軽減型か繰り上げ保留が安全です。まだ確認できていない項目がある方は、LINEで「ローン」と送るだけでチェックリストが届きます。
まとめ
- ポイント1:「金利が上がった=即繰り上げ」ではなく、手元資金・控除残期間・収入変動リスクの3つを確認してから判断するのが正解
- ポイント2:住宅ローン控除の控除率は0.7%(2026年4月時点)。借入金利がこれを上回ってから繰り上げ検討のゾーンに入るが、それだけで即決しないこと
- ポイント3:共働き世帯は育休・時短・教育費ピークとの兼ね合いが特に重要。緊急予備費と教育費積立を確保した上での余剰分が繰り上げ返済の原資
- ポイント4:期間短縮型か返済額軽減型かは「家計の今の課題」で選ぶ。月々が苦しいなら返済額軽減型、余裕があり早期完済を目指すなら期間短縮型
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